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2018年9月11日 (火)

クイーン重箱の隅アルバムガイド寄り道 "Ghost Of A Smile"

9月5日はフレディの誕生日。その日に11月公開予定の映画「ボヘミアン・ラプソディ」のサウンドトラック盤のリリースが発表された。収録曲の中で一番目を引いたのはこれ。

"Doing All Right... revisited (Performed by Smile)"

公式サイトによると、ブライアンとロジャーがティム・スタッフェルを迎え、アビー・ロード・スタジオにて再録音したと書かれている。それを見てここからの記事を上げる時期が来たような気がしたので、書き進めてみる。

Ghost Of A Smile / Smile  (CDP 1049 DD)

2018091101

tracks   [written by]

  1. Earth   [Staffell]
  2. Step On Me  [Staffell/May]
  3. Doin' Alright   [Staffell/May]
  4. April Lady   [Stanley Lucas]
  5. Blag   [Taylor]
  6. Polar Bear   [May]
  7. The Man From Manhattan   [Howell]
  8. The Man From Manhattan (Back Again)   [Howell]

私はこれを1998年10月18日に、町田の「タハラ」というその地域では有名なCD屋さんで買った。値段は2千円くらいだった。店頭でブツを見つけたとき「このバンドって、クイーンの前身バンドと同じ名前を名乗ってるんだねえ。あはは...」と思いつつパッケージを手に取り裏返したところ、そこに乗っていた曲名は"Earth"、"Step On Me"、"Doin' Alright"...。本当に目を丸くして(多分、声も上げたと思う)、次の瞬間にはレジに向かっていたわ。

このCDはオランダのみの限定発売品で海賊盤ではない。公式リリース日は1998年6月30日。ブックレットにはオランダ国内のクイーン公式ファンクラブの連絡先が書かれていたり、ブライアンとロジャーの写真が載っていることから契約違反なものでないことも感じられた。そのブックレットにはさらに、1992年にロジャーのプロジェクト"The Cross"の公演にブライアンとティムが客演したときの写真とティム自身による序文が載っている。表裏のジャケットデザインもティムによるものだ。

2018091102

ちなみにほぼ同じ内容のミニLP "Gettin' Smile"が1982年に日本でのみリリースされたが、これは各メンバーの許可を取っておらず、すぐに廃盤になっている。私はこのアナログ盤は持っていない。

ここから先はトラック1-6. についてのみ書く。

1-6. の録音データについて、市販のクイーン本に書かれているものと、このCDのライナーノーツの記述では食い違いがある。ライナーノーツによると

  • トラック1-3. : 1969年6月、トライデント・スタジオ、ジョン・アンソニーのプロデュース
  • トラック4-6. :  1969年9月、デ・レーン・リー・スタジオ、フリッツ・フライヤーのプロデュース

とされているが、市販本だとトラック3-6は同年の12月、あるは翌年初めの録音とされている。ただし問題はトラック3。つまり"Doin' Alright"。実はこの曲だけステレオなのだ。他は全部モノ。しかも音質が他のトラックと全然違う。これはどういうことなんだ? 音質はクイーンのデビュー盤に近い。場所はトライデント・スタジオだから当たり前ではあるが、じゃあなぜトラック1-2と音が違うのだ。この点はライナーノーツでも市販本でもまったく説明されていない。

他にも食い違いがあって、トラック1-2は米マーキュリーと契約したスマイルの最初のシングルだが、

  • ライナー:プロモ盤が作られたのみで、結局店頭出荷はされなかった
  • 市販本:1000枚のみがプレスされリリースされた

となっているのだ。日本のレコードコレクター誌にはマニア提供品の写真が載っているが、そこに載っているスマイルのシングルはプロモ盤だけなので、ライナーノーツの方が正しいと思われる。

あと気になるのが市販本(というか、ほぼ100%和久井光司さんによる記事ですがw)には「トラック3-6のティムとされているボーカルは、フレディにしか聞こえない」と書かれているが、それは絶対誤り。誤りだが、ティムとフレディの声が似ているのは確かである。特に2.の"Step On Me"は一瞬「これ、"Killer Queen"の元ネタでねえの?」と思ったほど雰囲気が似ている。これはいい曲で、クレジット上はティムとブライアンの共作だが、ほとんどブライアンの作品だそうだ(ライナーノーツより)。

あとは細々したことを。4.のリードボーカルはブライアンとロジャーが分け合っている。作者のスタンリー・ルーカスという人はプロの作曲家のようで、録音はレコード会社のオファーによるもの(ここでサザン・コンフォートというバンドによる"April Lady"が聴ける)。5.でのギター・ソロは後に"Son And Daughter", "Brighton Rock"に発展したものなんだけど、作者はロジャー。6. は、ブライアンとティムがボーカルをとっている。



さて、"Doin' Alright"の件だが、ここから先は私の妄想だ。

クイーンは1972年1月からデビュー盤の録音を始めていた。場所はトライデント・スタジオ。しかしその時点ではレコード会社との契約は結べておらず、リリース日は未定。最終的にはEMIと契約を結んだ1973年1月までかかったのだが、メンバーには焦りも生まれていたのだ。そんな中、ある日スタジオにティムが遊びに来た。ティムはスマイルから脱退したものの、ブライアン、ロジャー、フレディとの友人関係は続いていた。その時ブライアンは、気分転換も兼ねてあることを思いついた。

ブライアン「フレディ。それにジョン。ティムが来て思い出したんだけど、スマイル時代に書いた"Doin' Alright"といういい曲があるんだよ。ちょっと3人でやってみるけど、聴いてくれる?」

そこで録音したのがこのテイク。フレディとジョンにも好評で、曲はデビュー盤に採用されることになった。ところが後日、このテイクの存在を知ったかつてスマイルと契約を結んでいたレコード会社(マーキュリー・レコード)から抗議が飛んできた。「スマイルは解散したが、我々との契約期間はまだ残っている。ブライアン、ロジャー、ティムの3人で録音したのならばそれはスマイルそのものだ。クイーン側には録音を保持する権利はない」と主張し、クイーンから録音テープを奪っていったのだ。

 

参考文献:
「レコード・コレクターズ(1992年5月号)」ミュージック・マガジン刊
「地球音楽ライブラリー/クイーン(1996年11月初版及び2004年5月改訂版)」Tokyo FM出版刊
「レコード・コレクターズ増刊クイーン・アルティミット・ガイド(2005年11月)」ミュージック・マガジン刊
「レコード・コレクターズ(2011年5月号)」ミュージック・マガジン刊
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